いとしろ暮らしインタビュー

多年代で学ぶ、遊ぶ。地域に支えられる、小さな学校だからできる、マンツーマン教育

インタビュアー

平井隆平校長、山田暁男教頭 のプロフィール

全校生徒わずか十数名の石徹白小学校。小さな学校での教育と、そこで育つ子供たちについて、校長先生と教頭先生に伺いました。

平井隆平校長
・2012年4月より石徹白小学校に赴任。

山田暁男教頭
・2010年4月より2013年3月まで、石徹白小学校に勤務。

(2013.2.22 インタビュー)

○少人数教育で育まれる、自立性と協調性

―― 石徹白小学校の学級体制は?

教頭)現在(平成24年度)は、2学年ごとの複式学級(1・2年学級は、2年生が欠員のため、1年生1名のみ)となっており、3クラスとなっています。平成25年度は1年・3年が欠員となりますので、「2年と4年」「5年と6年」の2クラスになる予定です。

―― 石徹白の子供たちは、どんな子たちですか?

教頭)素朴です。でも、大人と接する機会も多く、場慣れしていると思います。
人数が少ないから、自分の意見を言う場面も多く、しっかり言うことができます。
また、適応力もあると思います。これだけ広い小学校を、12人の子供たちだけで掃除している。少人数なので、誰もが何かをやらないと作業は終わりません。、普段から自分の掃除場所が終わったら、他に何か手伝うことが無いかを聞くことが、普通にできています。

校長)違う学年の子供たちが一緒に生活することが、自然と身についているというのも、大きな特徴です。
通常の小学校ですと、複式学級ではないため、子どもたちに同世代以外のつながりはほとんどありません。このため、「縦割り活動」を意図的につくっています。
石徹白小学校の場合は、1年生から6年生が一緒に活動しているので、上の学年の子が、下の学年の子の面倒をみるということが、当たり前のようにできています。

教頭)放課後の遊びも全員一緒で、保育園の子も一緒に遊んでいます。石徹白の子たちは皆、面倒見がいいですね。

○小さな学校だからできる、細やかな教育

―― 少人数ということで、他所とは違う良さはありますか?

教頭)教師としては、子どもが少ないので、個々に応じることが100%できます。石徹白では1人1人の子のための準備が、具体的にできます。

教頭)授業内でも、大人数だと全員が出来ているか把握するのに時間がかかりますが、3人なら時間がかからない。時間の節約できるので、質の高い教育ができます。

―― 学力的にみて、石徹白の子供たちは如何ですか?

教頭)塾に行っている子はいませんが、学力調査では、児童全員が、全国平均より上です。

校長)ここは保育園と小学校が併設されていて、ある意味一貫教育ができます。
人数が少ないため、大人数の中での社会性や、競争心を養うということは、あまり経験できません。しかし、一人一人が自立心を持って、しっかりとした実力を身につければ、どこでも大丈夫、という想いでいます。

―― 心配ごとはありますか?

教頭)石徹白には病院は無く、診療所が週に1回開きます。大きな怪我があった時は車で搬送しなければいけないのが少し不安でしょうか。ただ、これまで幸い大きなけがはほとんど起こっていません。

校長)風邪で休む子も少ないですね。

教頭)保健室はありますが、ほとんど使われることがありません。(笑)

―― こどもが少ない分、先生も楽なのでは?

教頭)こどもが少ない分、先生も少ないので、やはり大変です。複式学級なので、2学年分、つまり1時間で2時間分の授業を用意しないといけない。しかもそれを1時間でこなさないといけない。

校長)先生も、スキルが高くないと大変かもしれません。

○教育現場からみる石徹白の魅力

―― 最後に、先生たちが感じる石徹白の良さは

教頭)こどもたちの教育の面でいうと、とても恵まれた環境です。
学校以外でも、地域として教育環境がよい。あたたかい人ばかりで、家庭や地域のつながりのなかで皆が知り合いで、お互いを気にかけています。このような環境で育つことができる子供たちは、幸せだと思います。
教師としてはその恵まれた環境の中で教育するのでやりやすいと思います。地域の方々や、親御さんの学校に対する理解も、すごくあります。
不便で大変、と思われがちですが、来てしまえばそれほどでもありません。道が封鎖されることはありません。ただ冬は雪おろしなどをしなければなりませんけれどもね。

校長)はじめ来たときは遠いな、と思っても、来てみれば何ともないです。山の中ですが開けた盆地で空が広い。春も夏も秋も素晴らしい。特に秋の紅葉は、圧巻。全国で有数では、と思っています。
それと、地域が学校を大事にしています。予算の関係で学校の統廃合をすすめる市町村が多いですが、郡上市にはそのような方針はありません。行政もがんばっている、と感じます。
石徹白には3世代の家族が多いですが、「今ある学校の一輪車は、お父さんたちの時にスタートしたんだぞ」など、子供に自慢話もするそうです。石徹白小学校があることで、この地域では3世代で話ができるんですね。

(インタビュー:ふるさと郡上会 小林謙一 2013.2.22)